才事記

父の先見

先週、小耳に挟んだのだが、リカルド・コッキとユリア・ザゴルイチェンコが引退するらしい。いや、もう引退したのかもしれない。ショウダンス界のスターコンビだ。とびきりのダンスを見せてきた。何度、堪能させてくれたことか。とくにロシア出身のユリアのタンゴやルンバやキレッキレッの創作ダンスが逸品だった。溜息が出た。

ぼくはダンスの業界に詳しくないが、あることが気になって5年に一度という程度だけれど、できるだけトップクラスのダンスを見るようにしてきた。あることというのは、父が「日本もダンスとケーキがうまくなったな」と言ったことである。昭和37年(1963)くらいのことだと憶う。何かの拍子にポツンとそう言ったのだ。

それまで中川三郎の社交ダンス、中野ブラザーズのタップダンス、あるいは日劇ダンシングチームのダンサーなどが代表していたところへ、おそらくは《ウェストサイド・ストーリー》の影響だろうと思うのだが、若いダンサーたちが次々に登場してきて、それに父が目を細めたのだろうと想う。日本のケーキがおいしくなったことと併せて、このことをあんな時期に洩らしていたのが父らしかった。

そのころ父は次のようにも言っていた。「セイゴオ、できるだけ日生劇場に行きなさい。武原はんの地唄舞と越路吹雪の舞台を見逃したらあかんで」。その通りにしたわけではないが、武原はんはかなり見た。六本木の稽古場にも通った。日生劇場は村野藤吾設計の、ホールが巨大な貝殻の中にくるまれたような劇場である。父は劇場も見ておきなさいと言ったのだったろう。

ユリアのダンスを見ていると、ロシア人の身体表現の何が図抜けているかがよくわかる。ニジンスキー、イーダ・ルビンシュタイン、アンナ・パブロワも、かくありなむということが蘇る。ルドルフ・ヌレエフがシルヴィ・ギエムやローラン・イレーヌをあのように育てたこともユリアを通して伝わってくる。

リカルドとユリアの熱情的ダンス

武原はんからは山村流の上方舞の真骨頂がわかるだけでなく、いっとき青山二郎の後妻として暮らしていたこと、「なだ万」の若女将として仕切っていた気っ風、写経と俳句を毎日レッスンしていたことが、地唄の《雪》や《黒髪》を通して寄せてきた。

踊りにはヘタウマはいらない。極上にかぎるのである。

ヘタウマではなくて勝新太郎の踊りならいいのだが、ああいう軽妙ではないのなら、ヘタウマはほしくない。とはいえその極上はぎりぎり、きわきわでしか成立しない。

コッキ&ユリアに比するに、たとえばマイケル・マリトゥスキーとジョアンナ・ルーニス、あるいはアルナス・ビゾーカスとカチューシャ・デミドヴァのコンビネーションがあるけれど、いよいよそのぎりぎりときわきわに心を奪われて見てみると、やはりユリアが極上のピンなのである。

こういうことは、ひょっとするとダンスや踊りに特有なのかもしれない。これが絵画や落語や楽曲なら、それぞれの個性でよろしい、それぞれがおもしろいということにもなるのだが、ダンスや踊りはそうはいかない。秘めるか、爆(は)ぜるか。そのきわきわが踊りなのだ。だからダンスは踊りは見続けるしかないものなのだ。

4世井上八千代と武原はん

父は、長らく「秘める」ほうの見巧者だった。だからぼくにも先代の井上八千代を見るように何度も勧めた。ケーキより和菓子だったのである。それが日本もおいしいケーキに向かいはじめた。そこで不意打ちのような「ダンスとケーキ」だったのである。

体の動きや形は出来不出来がすぐにバレる。このことがわからないと、「みんな、がんばってる」ばかりで了ってしまう。ただ「このことがわからないと」とはどういうことかというと、その説明は難しい。

難しいけれども、こんな話ではどうか。花はどんな花も出来がいい。花には不出来がない。虫や動物たちも早晩そうである。みんな出来がいい。不出来に見えたとしたら、他の虫や動物の何かと較べるからだが、それでもしばらく付き合っていくと、大半の虫や動物はかなり出来がいいことが納得できる。カモノハシもピューマも美しい。むろん魚や鳥にも不出来がない。これは「有機体の美」とういものである。

ゴミムシダマシの形態美

ところが世の中には、そうでないものがいっぱいある。製品や商品がそういうものだ。とりわけアートのたぐいがそうなっている。とくに現代アートなどは出来不出来がわんさかありながら、そんなことを議論してはいけませんと裏約束しているかのように褒めあうようになってしまった。値段もついた。
 結局、「みんな、がんばってるね」なのだ。これは「個性の表現」を認め合おうとしてきたからだ。情けないことだ。

ダンスや踊りには有機体が充ちている。充ちたうえで制御され、エクスパンションされ、限界が突破されていく。そこは花や虫や鳥とまったく同じなのである。

それならスポーツもそうではないかと想うかもしれないが、チッチッチ、そこはちょっとワケが違う。スポーツは勝ち負けを付きまとわせすぎた。どんな身体表現も及ばないような動きや、すばらしくストイックな姿態もあるにもかかわらず、それはあくまで試合中のワンシーンなのだ。またその姿態は本人がめざしている充当ではなく、また観客が期待している美しさでもないのかもしれない。スポーツにおいて勝たなければ美しさは浮上しない。アスリートでは上位3位の美を褒めることはあったとしても、13位の予選落ちの選手を採り上げるということはしない。

いやいやショウダンスだっていろいろの大会で順位がつくではないかと言うかもしれないが、それはペケである。審査員が選ぶ基準を反映させて歓しむものではないと思うべきなのだ。

父は風変わりな趣向の持ち主だった。おもしろいものなら、たいてい家族を従えて見にいった。南座の歌舞伎や京宝の映画も西京極のラグビーも、家族とともに見る。ストリップにも家族揃って行った。

幼いセイゴオと父・太十郎

こうして、ぼくは「見ること」を、ときには「試みること」(表現すること)以上に大切にするようになったのだと思う。このことは「読むこと」を「書くこと」以上に大切にしてきたことにも関係する。

しかし、世間では「見る」や「読む」には才能を測らない。見方や読み方に拍手をおくらない。見者や読者を評価してこなかったのだ。

この習慣は残念ながらもう覆らないだろうな、まあそれでもいいかと諦めていたのだが、ごくごく最近に急激にこのことを見直さざるをえなくなることがおこった。チャットGPTが「見る」や「読む」を代行するようになったからだ。けれどねえ、おいおい、君たち、こんなことで騒いではいけません。きゃつらにはコッキ&ユリアも武原はんもわからないじゃないか。AIではルンバのエロスはつくれないじゃないか。

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2000年間で
最大の発明は何か

ジョン・ブロックマン編

草思社 2000

John Brockman
The Greatest Inventions of The Past 2000 Years 2000
[訳]高橋健次
編集:久保田創
装幀:坂川事務所

源氏千年紀の次は
一転して、世界発明2000年史だ。
21世紀を迎えるにあたり、
各界の識者が世界一の発明を挙げた。
各自が興味津々の候補を示した。
ただし、これはウイットに富む指摘集でもある。
諸君も自分ならどうするか、
思案しながら愉しんでもらいたい。

 編者のブロックマンは異能のエディティング・プロデューサーである。90年代に「第三の文化」プロジェクトを推進したのち21世紀を迎える直前、「エッジ」というサイトを開いて、本書にまとめたような問いを各界の第一人者にメールでぶつけた。
 マレー・ゲルマン、ジャレド・ダイアモンド(1361夜)、フリーマン・ダイソン、ロジャー・シャンク(535夜)、リチャード・ドーキンス(1069夜)、ニコラス・ハンフリー、ダニエル・デネット(969夜)、レオン・レーダーマン、マーヴィン・ミンスキー(452夜)、スティーブン・ピンカーらが応えた。みんな、一家言を呈した。おハコもあるし、それなりに深い指摘もあるし、皮肉っぽいものもある。
 日本ではなかなかこういう試みが成立しない。ひとつにはジョン・ブロックマンのような、またTEDを立ち上げたリチャード・ワーマン(1296夜)のようなエディティング・プロデューサーがいないこと、ひとつには知識人どうしが多少のユーモアをもって互いをリスペクトしあっていないこと、ひとつには仮にこうした企画が成立しても回答者たちがつまらないことしか言わないこと、理由はけっこうある。一言でいえば「編集文化」を愉しんでいないのである。
 以下に、本書に掲載された「最大の発明」をざっと紹介するが、回答者の専門とその答えの微妙な関係が興味深いので、そこを見てほしい。ある程度だが、時代順に並べなおしておいた。
 ちなみに回答者のなかにもそういうコメントをする連中が少なくなかったのだが、ブロックマンが2000年前以降としたことにはけっこう不満も出ている。馬の家畜化やピタゴラスがそうだったように、人類の重要な発明はもっと以前からおこっていたというのだ。

【馬の家畜化】【あぶみ】【首あて】ピーター・タラック、ステ
   ィーブン・ブディアンスキー
 馬がいかに人類と文明の歯車になったかということは、ジュリエット・クラットン・ブロックの『馬と人の文化史』(東洋書林)に詳しく、その影響が中世社会の地球をどう変えたかということはリン・ホワイト(168夜)の『中世の技術と社会変動』に詳しい。小作農を集合させて強大な村落に仕上げたのは馬たちだったのである。

【犂(すき)】コリン・タッジ
 カインがアベルを殺して以来というもの、牧畜と農耕と園芸が人類の文明をつくりあげた。牛が引く犂が活躍したのだ。タッジはロンドン大学経済学部の自然哲学者。車輪より電話よりコンピュータよりも犂だと主張する。

犁(すき)
牛馬に引かせた犁(すき)による耕作。

【籠】ジェレミ・チャーファス
 ふーん、籠か。しかし、なぜ籠なのか。生物学者のチャーファスは最初は録音しないテープ式録音再生機としてのウォークマンを思いついたらしいのだが、そしてそこからあらゆる電気器具、自動車、飛行機などにアタマをめぐらしたのだが、いずれも結局は電池が必要なので、これらを削いでいったほうがいいと決断したらしい。そうしたら、ついに籠に落着したのだという。すばらしい結論だ。

【梯子と階段】カール・サバーク
【旗】ミハイ・チクセントミハイ

【水道】カール・ジマー、マリア・レポウスキー
 ジマーは「ディスカバー」や「ナショジオ」のエディター兼ライター。上下水道がなければ世界はぐちゃぐちゃになっていたか、いつまでもペストに悩まされていただろう。

【アルファベット】スティーブン・ピンカー
【鏡】トール・ノーレットランダーシュ(1509夜
【鐘】ジュリアン・バーバー

【盤上ゲーム】ジョン・ヘンリー・ホランド
 名著『インダクション』のホランド(930夜)が囲碁・将棋・チェス・双六などの盤上ゲームをとりあげたことに感銘した。やっぱりこの男、かなり世界読書奥義伝をもっている。当然、ビデオゲームやファミコンまで入るが、実は電車の路線から飛行機の航空路まで、盤上ゲームなのである。

西洋のチェスと東洋の囲碁
盤上ゲームは西洋でも東洋でも、政治や戦争に対する初期のメタファー的手引きとなった。

【蒸留法】ロン・クーパー
 プリニウスの博物誌には、樹脂からテレビン油を抽出する方法が記録されている。葛洪(かっこう)の錬丹術から中世ヨーロッパとアラビアの錬金術まで、その基本技能は蒸留の仕方にこそあった。ロン・クーパーはマルチメディア・アーティストだったが、デル・マゲイ社を創設して、竜舌蘭からメスカル酒を熟成させる仕事をするようになった。危ない奴ほど、おもしろい回答をする。

(左)竜舌蘭(右)メスカル酒

【乾草】フリーマン・ダイソン
 干し草はヨーロッパ中世が暗黒時代と呼ばれていた時期に、名もない男たちによって発明された。これで森林が牧草地に変わり、草は貯蔵され、文明がアルプスを越えるようになった。干し草こそウィーンやパリやベルリンをつくったのである。さすが“半球”のフリーマン・ダイソンだ。

(左)ロールベーラーで丸められた干し草
(右)山のように積まれた干し草

【都市】スティーブン・ジョンソン
 いかにもスティーブン・ジョンソンらしい答えだった。彼は発明は累積的であるのだから、これを蓄積する都市こそが発明総体をあらわしていると見たのである。そこで発明のOSとしての都市を選んだのだ。ジョンソンは長らく「フィード」の編集長だったが、『創発』や『ダメなものはタメになる』や『マインド・ワイド・オープン』(ソフトバンク・パブリッシング)で、一挙にイノベーション理論の先頭に立った。

【哲学的懐疑主義】ルーエン・チォウ
【疑問文】ルーベン・ヘルシュ
【幾何学】トマス・デ・ゼンゴティタ

【インド・アラビア計数法】ジョン・バロー、ヴィラヤヌル・ラ
   マチャンドラン、キース・デブリン
 これは当然だ。「桁」がなければIBMもビル・ゲイツもなかった。ここには「ゼロ」の発見(発明)も含まれる。とくに代数方程式に未知数を示す記号がなかったら、その後のいっさいの科学技術の発展はなかった。キース・デブリンは6世紀くらいにはほぼ計数法が完成したのではないかと言っている。ぼくは等号「=」の発明も凄いと見てきた。ほかの提案者、『万物理論』以降のジョン・バロー(1180夜)の本にも、『脳のなかの幽霊』(角川書店)以来のラマチャンドランの本にも、ぼくはしょっちゅうお世話になっている。先だってインフレーション理論の佐藤勝彦さんと話し込んでいたら、バローはすばらしく多能な物理学者だと言っていた。

【キリスト教とイスラム教】スチュアート・ブランド(1456
   夜)

【製紙技術】クリフォード・ピックオーバー
 蔡倫のごくごく小さな発明が世界を席巻した。ぼくは紙がなければ生きてはいけなかった。今後も、そうだ。たとえ本がデジタルになったとしても、紙がなければ筆で書は書けないし、障子はつくれない。和紙の、世界文化遺産登録、おめでとう。提案者はIBMワトソン研究所の研究員で、『コンピュータ・カオス・フラクタル』(白揚社)や『コンピュータ・ワンダーランド』(白揚社)の著者。

中国で発売された蔡倫の記念切手
蔡倫は製紙法を改良し、実用的な紙の製造普及に多大な貢献をした。

【時計】ダニエル・ヒリス
【数学における表現の概念】リー・スモリン

【レンズ】【読書用眼鏡】【望遠鏡】ジーノ・セグレ、スティー
   ブン・ピンカー、ニコラス・ハンフリー、ブライアン・グ
   リーン(1001夜)、クリストファー・ラングトン
 みんなレンズ・フェチなんだ。よかった、よかった。まずはミッテルブルフの眼鏡屋リッペルスハイである。ついでパドバ大学のガリレオだ。次にロバート・フックの『ミクログラフィア』で、そのあとがファン・レーウェンフックのバクテリア発見だろう。ぼくの場合は野尻抱影(348夜)さんのロング・トムと南方熊楠の虫メガネがここに入ってくる。

(左)望遠鏡
リッペルスハイが、天体観測のための道具を開発する。
(右)ロング・トム
野尻抱影先生とロング・トム。

【教育という概念】【教育の普及】スタニスラス・デハーネ、ロ
   バート・プロバイン
 プラトン(799夜)のアカデメイアからコメニウスをへてルソー(663夜)、ヴィーコ(874夜)、フロイト(895夜)、ピアジェまで、教育のしくみがなかったら世界はどうなっていたか。デーヴィッド・プリマックがかつて断言したように、ホモサピエンスの長所は教育を発明したことだったのだ。しかし、問題はこれからだ。教育ギョーカイに組織的低俗がありすぎる。デハーネはフランス国立衛生研究所の認知神経学者。

【大学】パウロ・ピニャテッリ
 自由七科とリベラルアーツこそ大学確立の真骨頂だ。しかし、今日の大学はあまりに専門分化をかかえこみ、また他方では大衆ポピュリズムにかまけて、かなりつまらないものになってきた。大学改革は21世紀最大の課題だろう。回答者はソフトウェア会社とメディア会社のCEOで、大学か図書館こそが今日のコンピュータ・ネットワーク時代の大前提だとおっしゃる。

【平等という理念】ジョーゼフ・レドゥ
【自治】エスター・ダイソン
【自由意志】ジョン・ホーガン
【進歩しつづけるという認識】ジョン・マッカーシー

【カラベル船】アリン・アンダーソン
 ポルトガルで15世紀に出現した。18~30メートルほどの船なのだが、ヨーロッパとアラビアの二つの文明が混血して生まれた船だった。甲板がほぼ完全に密閉され、ハッチを小さくし、船体全部がピッチでコーティングされた。このカラベル船で世界大航海時代が開闢したのだ。

【科学的方法】【超自然現象を信じないこと】ジョーゼフ・トラ
   ウブ、マレー・ゲルマン、デービッド・ショウ、ミルフォー
   ド・ウルポフ

【消しゴム】ダグラス・ラシュコフ
 これはいい。ナンシー関のためにも、うれしい一番だ(笑)。ただしラシュコフは消しゴムだけでなく、文書の修正液、コンピュータのデリートキー、合衆国憲法の修正箇条など、われわれの「誤りを訂正できるしくみ」全般をとりあげている。もっといい。消しゴム万歳だ。ラシュコフはニューヨーク大学で仮想文化を講じて、『ブレイク・ウィルスが来た!!』(ジャストシステム)、『癒すための覚醒法』(青弓社)、『サイベリア:デジタル・アンダーグラウンドの現在形』(アスキー)などを書いた。

【複式簿記】ゴードン・グールド
 まだ正確なルーツが突き止められてはいないけれど、一応は1494年にルカ・パチョーリというフランシスコ会の修道士が複式簿記の基本を工夫したということになっている。パチョーリは数学が好きで「スンマ」という比例算術が得意だったようだ。その後、ゲーテ(970夜)もエドワード・ジョーンズも複式簿記の重要性を説いた。バランスシート(均衡)の原則にもとづいた複式簿記は、しかし、もとはといえばヴェネツィアやジェノヴァの商人がイスラム商人から貸方と借方のアイディアを聞いて、船の「行って/帰って」のリスク・バランスをヒントにまとめたのではないかと思われる。ゴードン・グールドは、シリコンアレー・レポーター社とデジタルコースト社を子会社にもつライジングタイド・スタジオの社長。

ルカ・パチョーリの「スンマ」(1494年)
基本的に数学書であるが、その中に複式簿記に関する記述を含んでいることによって、印刷出版された世界最古の会計書となっている。

【印刷機】レオン・レーダーマン、ガーニス・カーティス、ヘン
   ドリック・ハーツバーグ、ブライアン・グッドウィン、ラ
   ンドルフ・ネス、フィリップ・キャンベル
 グーテンベルクやカクストンの印刷機をあげた有識者が多かったのは驚くにあたらない。たんに写本が自動印刷になっただけではない。印刷の普及は「音読社会」を「黙読社会」に変えていった。マクルーハンは、それによって人類に「無意識」が生じたのだと推測した。レーダーマンは『クォークとから宇宙へ』や『神がつくった究極の素粒子』の著者、グッドウィンはホリスティック生物学の主唱者で、『DNAだけで生命は解けない』(シュプリンガー・フェアラーク東京)によって「場の生命論」を説いた。キャンベルは「ネイチャー」編集長、ハーツバーグは「ニューヨーカー」「ニューリパブリック」のエディター。

(左)ヨハネス・グーテンベルク
   ドイツ出身の金属加工職人、印刷業者である。
(右) 活版印刷機

【コペルニクスの地動説】マイケル・ネスミス

【33年周期暦】ダンカン・スティール
 イギリスのプロテスタンティズムが提案した33年周期のカレンダーを世界最大の発明に挙げるとは意外だ。なぜならこれはまったく実施されなかったものなのだ。1582年、教皇グレゴリウス13世は従来の復活祭をいつにするかで決めてきたカレンダーに対して、たとえば春分を特定日にするような新たな暦をつくるように指示したのだが、ジョン・ディーやウォルター・ローリーらはキリストの生涯の33年を周期にした「完全キリスト教暦」の作成に乗り出したのである。しかしそんなものはつくれなかった。ところがこれをローリーたちは信じて航海に使うように進言した。その結果、このあやしい暦法によって新大陸アメリカが発見できたのだから、33年周期暦こそは世界最大の発明だったと、ダンカン・スティールは言うのだ。

【クラシック音楽】ハワード・ガードナー
 よくぞ古典音楽を選んだ。たしかに古典音楽や交響曲は歴史の一定期間に“創発”されたのだ。発明品といっていいのだろう。ガードナーはハーバードの教育学者。かつて『認知革命』(産業図書)を夢中で読んだものだ。『子供の描画』(誠信書房)や『砕かれた心』(誠書書房)といった著書もある。

【微積分法】【無限算法】ジョン・マドックス、バート・コス
   コ、ベリーナ・ヒューバー・ダイソン
 数学者たちならライプニッツ(994夜)やニュートンが到達した微積分法を最大の世界解析武器に挙げるだろう。でなければモグリだ。これによってわれわれはゼロと無限のあいだを知れることになり、連続体とは何かということを理解できるようになったのだ。かつては「流率法」と呼ばれていた。

微積分グラフ
微分は局所的な変化を捉え、積分は局所的な量の大域的な集積を扱う。

【発明を可能にした社会構造】ジョン・C・バエズ
 これはようするにフランシス・ベーコンの『ニュー・アトランティス』を褒めているのだ。「必要は発明の母」というけれど、社会構造の捩れぐあいが発明の母なのだ。バエズはカリフォルニア大学の数理物理学者。

【ライデン瓶】【ボルタ電池】ジョン・レニー、ダニエル・デネ
   ット
 いまのところ電池はどんなに巨大強力なものでもミトコンドリアによるATP合成システムにはかなわないが、これがなければトランジスタラジオもケータイも動かないのだから、文明は電池がなければほぼ麻痺するといっていい。アレッサンドロ・ボルタが1800年に発明した。ぼくはデネット(969夜)の志向性理論をあまり評価していないけれど、電池は小学校で電気倶楽部をつくって以来のフェチの対象なのである。それにしても、「だったら籠の発明を評価すべきだ」と言ったジェレミ・チャーファスは痛快だ。

(左)ライデン瓶
ファン・ミュッセンブルークが、電気を蓄え、放出することは可能であることを実演してみせる 。
(右)ボルタ電池
銅と亜鉛を用いたボルタ電池の仕組み。

【魔法瓶】レオン・レーダーマン
 バキューム・フラスク。1881年にドイツのヴァインホルトが液化ガスの保存用に発明した。1904年にテルモス社が商品化したので、Thermos Vacuum Flask が通り名になった。日本の魔法瓶という呼び名は、アメリカのアラジン社(アラジンと魔法のランプ)に由来する。この魔法瓶を黒体輻射に応用すれば、それがマックス・プランクの量子力学の発見になり、アインシュタイン(570夜)の光量子の発見になる。

【匂いの化学認識】マーヴィン・ミンスキー
 ミンスキー(452夜)がこのことを世界発明のトップに挙げたのは驚いた。ラボアジェやプリーストリーが化学物質の匂いは必ずしもその物体の属性ではないことを突き止めたことに、つまりは気体状になった化学物質と本体の違いに気が付いたこの些細な洞察に、ミンスキーはその後の化学の飛躍的発展の基礎が築かれたことがあると言いたかったのであろう。でも、誰も香水や香辛料を挙げなかったね。

【静電気をつくる機械】アーノルド・トレハブ
 フォン・ゲーリケの発明のことだ。一般には起電機という。たしかにこれがなかったら、発電、通信、コンピュータ、生体電気の解明はなかった。トレハブはMITの心理学者。

(左)オットー・ フォン・ゲーリエ
(右)静電気発生装置(1750年ごろの版画)

【進化論】【自然淘汰説】【熱力学第二法則】ポール・エバル
   ト、クリストファー・ラングトン
 この3つともむろんピカピカな考え方の発明だが、進化論(自然淘汰説)と熱力学第二法則を並べたのは、クリストファー・ラングトンの慧眼だ。そもそも発明には「複雑さを増大させる発明」と「複雑さを減少させる発明」とがある。自然淘汰説や熱力学第二法則は複雑さを少なくさせて現象を観察するための「方法の発明」なのだ。

【確率論】【数字をつかった予測能力】クリストファー・ウェス
   トベリー、ジョージ・ジョンソン
 パスカル(762夜)が賭博の賭け率の性質を分析してみせた1654年からラプラスの思索と計算をへて、アントアーヌ・クールノーが偶然を定義した1843年までに確率論は形成されていた。ぼくも確率論はかなり有力な世界観の発明だろうと思うのだが、本気でそうするには、ここに確率振幅をもたらしたシュレディンガー方程式まで入れる議論が必要なのである。

シュレディンガー方程式
量子力学の分野において用いられる方程式である。原子などの量子状態の時間変化を状態べクトルや波動関数で表すために用いられる。

【銃】【ガトリング砲】マリア・レポウスキー、ボブ・ラファエ
   ルソン
 単銃から連銃へ。アメリカのリチャード・ガトリングが1861年に複数の銃身を外部動力(人力やモーター)で回転させながら連続砲撃できるように工夫発明した。真鍮の雷管がついた銃弾なら毎分400発を連射できた。日本では戊辰戦争で佐賀藩や長岡藩の河井継之助や新島襄に嫁いだ八重が初めて使用した。ガトリング砲の基本技術はその後さまざまな発展をみせ、ベトナム戦争で恐るべき威力を発揮したバルカン砲にまで至った。ボブ・ラファエルソンは映画監督。どおりで、これを選んだ理由がよくわかる。映画監督というもの、なぜか銃が好きなのである。

【電灯】【電気の実用化】マーク・ハウザー、パトリック・ベイ
   トソン
 ケンブリッジの行動生物学のベイトソンは、最初はバベッジの解析機械やワープロの発明をあげるつもりたったらしいが、電気一般にしたようだ。1828年の電灯はジョーゼフ・スワンが白熱電球の特許をとる50年前のことだった。ハウザーはハーバードの心理学者。

【分光器】リチャード・ドーキンス
 利己的遺伝子のドーキンス(1069夜)が分光器を挙げたのか。ちょっと意外だった。きっとフラウンホーファー線に敬意を表したのだ。そしてハッブルの赤方偏移の発見を称えたかったのだ。ドーキンスって、どこかキザだと思っていたが、案外かわいらしい。

天体観測用の分光器
望遠鏡に取り付け、恒星や銀河の分光を測定する。

【長距離通信】トム・スタンデージ
【電動モーター】ロドニー・ブルックス
【交響楽団】ジュリアン・バーバー

【麻酔】スチュアート・ハメロフ
 インカ帝国時代、すでにシャーマンらは頭蓋骨を開口するときコカノキの葉を噛んで傷口に吐き出して局所を麻痺させていた。しかし麻酔が西洋医学で使われたのは、1772年にジョーゼフ・プリーストリーがジエチルエーテルをガス状にして使用したのが初期の成功例で、その後、亜酸化窒素やエーテルガスによる手術を成功させ、1884年にフロイトの知人だった眼科医のカール・コラーが液体コカインを使用したのが最も知られた実験になった。麻酔ガスが「ロンドン分散力」というきわめて微弱な量子力学的な力によって疎水性のポケットに溶けこむ理由は、実はいまだに説明できていない。ハメロフはアリゾナ大学意識研究所の副所長。

【アスピリン】マーク・ハウザー
 誰かがあげるにきまっていた。1853年にフランスで発明されていた。トリスタン・ツァラ(851夜)によってアスピリン・エイジが広まった。それにしても抗生物質を誰もトップに挙げなかったのはなぜだろう。

【自我】ジャロン・ラニアー
【無意識の概念】シェリー・タークル

【空飛ぶ機械】リチャード・ポッツ
 炉と船と車輪。それを上回るのが情報の記号化と暗号化による情報保存システムだ。ポッツはそう言いながら、しかしそれ以上にやはり飛行機がわれわれのすべての進化論的な常識を打ち破ったと解釈している。ポッツはスミソニアン博物館の「人間の起源プログラム」の部長さん。ぼくも会ったことがある。

【真空管】ピーター・コクラン
 リー・デ・フォレストが熱電子放出式電子管、つまりは真空管を発明したのは1915年のことだ。電子工学はすべてここから始まった。ぼくとしてはここにウィリアム・クルックス卿の陰極線の発見を加えたい。その理由を知りたい向きは『遊学』(中公文庫)を読まれたい。ちなみにジョン・バーディーンとウィリアム・ショックレーがこれを応用したトランジスタを発明したのは1945年である。これがなかったらソニーもパーソナル・コンピュータも、この世に出現していなかった。

(左)サー・ウィリアム・クルックス
イギリスの化学者、物理学者である。
(右)真空管の一種
5球スーパーラジオに使われる代表的なもの。

トランジスタ
増幅、またはスイッチ動作をさせる半導体素子で、近代の電子工学における主力素子。

【非宗教主義】ジェイ・オーグルビー
 これが発明だとは気がつかなかったが、言われてみるとフォイエルバッハ、マルクス(789夜)、ニーチェ(1023夜)、フロイト(895夜)といった非宗教主義の考え方がなかったら、ヨーロッパ社会はいつまでも「神の縛り」を受けなければなかったのである。もっとも、ビジネス・ネットワークの創始者オーグルビーが立ち上げたSRIのバリュー&ライフスタイル・プログラムによる一般調査では、このことの重要性はあまり認知されていないらしい。オーグルビーはがっかりして、スチュアート・ブランド(1456夜)とともに「われわれこそが神なのだ」と言いたいと吐露していた。でも、それってイスラム自爆テロと変わりがなくなるんじゃないか。

【民主主義と社会主義】スティーブン・ローズ
【量子論】フィリップ・アンダーソン
【ゲーデルの不完全性定理】クレイ・シャーキー
【原爆】ダン・スペルベル、マーニー・モリス

【エコノミック・マン】メアリー・キャサリン・ベイトソン
 これはメアリーの父のグレゴリー・ベイトソン(446夜)が「人間の歴史のなかで一番退屈なのがエコノミック・マンの発明だったんだよ」と言ったことを受けて、あえて皮肉として提出した回答である。とくにエコノミック・マンたちが自分がしていることは合理的だと思いこんでいるところが、なんとも退屈至極なのだ。メアリーは父と同様、「情には、理からはうかがい知れない理がある」と言いたいのだ。大賛成。

【科学の組織化】サミェル・バロンデス
 こういう回答が一番つまらない。アメリカにもこの手の連中がまだごっそりいるのだろう。

【チューリング・マシン】ジョージ・ダイソン
 ジョージ・ダイソンのような歴史家が、数学機能と生物学的未来を兼ね備えたチューリング・マシンを挙げるとは思わなかった。よく見ているね。ちなみに正確には「万能チューリングマシン」UTMである。パソコンとはUTMの具現化なのだ。ここでは説明しないが、チューリングの思考法にはぼくが最も震撼とする編集的方法が唸っている。

チューリングマシンの模式図
無限に長い節からできたテープと、テープの節を読み書きするヘッドから構成されている。ヘッドは読み取った節の内容を記憶できる。

【コンピュータ】【デジタル・ビット】ダン・スペルベル、ロレ
   ンス・クラウス、デービッド・ヘイグ、ウィリアム・カル
   ビン
 パピルスはぼろぼろになり、タブロオはぼやけ、写真は白茶ける。だからデジタル・ビットで何でも整形してしまおうというのがグーグルだとしても、現在のコンピュータはそれよりずっと能動的である。初期のコンピュータは、もともとはホレリス計表機とフリップフロップ回路とチューリングマシンが組み合わさったものだったが、パソコン化してからはどんどんソフトウェアを導入することが可能になって、化け物のように発達していった。ロレンス・クラウスはそのうちDNAの配列に近いしくみを内蔵するのではないかと言い、ウィリアム・カルビンはこれからのパソコンは気象を内包するのではないかと言っている。

コンピューター
1946年、17468本の真空管を使って作られた電子計算機(ENIAC)

【テレビ】ビビアナ・グスマン、デービッド・バス
 フルート奏者のビビアナはテレビによって犯罪が増加してセックスフリークが氾濫し、おまけにクラシックコンサートの客を減らしたから、挙げたのだと言う。バスも男女の配偶感覚に与えた悪しき影響力としてテレビを挙げた。残念ながら、誰もテレビのニュース性や娯楽性や実況能力を“発明”とは見ていない。テレビ業界はちょっと本気に反省したほうがいい。

【ロボット】【自律性をもって動く道具】ピート・ハット
【宇宙旅行】ルーベン・ヘルシュ
【遺伝子工学】オリバー・モートン

【経口避妊ピル】スーザン・ブラックモア、マリア・レポウスキ
   ー、コリン・ブレイクモア
 避妊をどうするか。このことこそ世界の歴史の隠れたテーマだったろう。『ミームマシンとしての私』のブラックモア(647夜)をはじめ、名だたる女性科学者がピルをあげたのは、当然だった。レボウスキーは19世紀後半の水工学にも一票を投じている。ブレイクモアはオックスフォードの心理学者で、『心のメカニズム』(講談社)などの著書がある。

【マーケティング】【商品としての情報】ジェフリー・ミラー、
   デービッド・ベルビー
 アーサー・ミラーの『セールスマンの死』が描いた悲劇は、マーケティングの充実と発展によって回避できるようになった。農業社会でも重商社会でも何をどのように売ったらいいかということは大きな課題だったけれど、大衆が待ち構えるマーケットに商品を一挙に売るにはどうするかということについては、20世紀半ば、P&GやGEがマーケティング部門を新設する60年代までははっきりしていなかった。そのせいか、マーケティングについてはいまだに知識人の理解が乏しい。しかしミラーもベルビーも、もしキリスト教の宣教と宗教改革を知識人が評価するのなら、いまやマーケティングをこそ21世紀の新たな思想なんだとみなすべきだと主張する。ただし、マーケティングという用語がつまらない。早く変えなさい。ぼくはそれとともに、トヨタのことを日本の小学校の教科書に載せたほうがいいと思っている。

【20世紀後半の医療】ジェームズ・オドネル
 20世紀前半の医学は抗生物質に象徴される。後半期はMRIやCTに代表されるような画像処理型の医療であろう。しかしそうなればなるほど、われわれは“赤ひげ”に出会えないということになる。

コンピューター断層撮影法(CT/CATスキャン)
1971年イギリスの電子技術者のハウンズフィールドが、新しい画像技術を開発する。

【対照群】デービッド・マイヤーズ

【緑の革命】ジョン・サール
 1960年代にはじまった農業改革技術の総称だ。サールは地球規模の人口問題に答えられるのがこれしかないと言う。エマニュエル・トッドの議論とともに熟慮したい。サールはUCLAのチョー有名な情報神経医学者。「中国人の部屋」問題の提唱、『志向性』(誠信書房)、『心・脳・科学』(岩波書店)にはぼくも洗礼をうけた。

【遺伝子配列の決定法】【ヒトゲノム解析計画】ロバート・シャ
   ピロ
 1970年代にフレデリック・サンガーとハーバード大学のウォルター・ギルバートが超絶技法でヒトの遺伝子配列の解析に成功した。シークエンサーによって30億のDNAがことごとく読めるようになったのだ。シャピロの本はだいたい読んだ。いまはニューヨーク大学の生化学の先生だ。

【公開鍵暗号システム】チャールズ・サイモニー
 パブリックキーによる暗号システム(PKC)のことだ。長らく情報通信をめぐる安全技術と安心技術の合体が望まれていたのだが、PKCは匿名性、認証制、信頼性の3つを成就させた。しかし個人が完全な番号を専有するとは、社会的にはどういうことなのか、実は議論は出尽くしていない。ぼくはコンピュータ・ネットワークにはいまだ「鍵と鍵穴」の思想ができあがっていないと見ている。

【インターネット】【コンピュータ・ネットワーク】ロジャー・
   シャンク、ジョン・ドゥボラック
 電気、電話、ネットワーク、シリコンチップ、CRTといった先行発明に依存しているとはいえ、インターネットが今後も歴史を変える発明の温床になっていくだろうことは、誰も疑ってはいない。インターネットは情報生態系になったのだ。フィリップ・K・ディックのVALISはSFではなくなったのだ。もっともコラムニストのジョン・ドゥボラックはボルト・ナットを最初に考えて、その最もすばらしい発展系としてコンピュータ・ネットワークを挙げるに至ったのだという。このヨコすべりな連想がおもしろい。ロジャー・シャンク(535夜)は『人はなぜ話すのか』(白揚社)のほかに、LISPに照準をあてた『自然言語理解入門』(総研出版)、脳とコンピュータを比較した『考えるコンピュータ』(ダイヤモンド社)などが読ませる。

【デジタル生態系】アンディ・クラーク
【見えない技術体系】ハワード・ラインゴールド
【ある考えについての考え】ジョージ・レイコフ

⊕ 『2000年間で最大の発明は何か』 ⊕

 ∃ 編者:ジョン・ブロックマン
 ∃ 訳者:高橋健次
 ∃ 発行者:加藤昌男
 ∃ 発行所:株式会社 草思社
 ∃ 印刷所:綿明印刷株式会社
 ∃ 製本所:加藤製本株式会社
 ⊂ 2000年1月1日発行

⊗目次情報⊗

∈∈∈ まえがき……ジョン・ブロックマン
∈ 第一部 発明が生活を変えた
∈∈ 印刷機……ブライアン・C・グッドウィン
∈∈ 電動モーター……ロドニー・ブルックス
∈∈ 長距離通信……トム・スタンデージ
∈∈ 犂……コリン・タッジ
∈∈ 静電気をつくる機械……アーノルド・トレハブ
∈∈ カラベル船……アリン・アンダーソン
∈∈ 科学の組織化……サミュエル・H・バロンデス
∈∈ 緑の革命……ジョン・R・サール
∈∈ 電灯とアスピリン……マーク・D・ハウザー
∈∈ インド−アラビア計数法……ジョン・D・バロウ
∈∈ 印刷機と魔法瓶……レオン・レーダーマン
∈∈ 空飛ぶ機械……リチャード・ポッツ
∈∈ 大学……パウロ・ピニャテッリ
∈∈ 消しゴム……ダグラス・ラシュコフ
∈∈ テレビ……ビビアナ・グスマン
∈∈ グーテンベルクの印刷機……ガーニス・カーティス
∈∈ ピル……スーザン・ブラックモア
∈∈ 電気の実用化……パトリック・ベイトソン
∈∈ 水道……カール・ジマー
∈∈ 遺伝子配列の決定法……ロバート・シャピロ
∈∈ クラシック音楽……ハワード・ガードナー
∈∈ インターネット……ロジャー・C・シャンク
∈∈ 印刷機……ランドルフ・ネス
∈∈ 蒸留法……ロン・クーパー
∈∈ テレビ——配偶への影響……デービッド・バス
∈∈ コンピュータと原爆……ダン・スペルベル
∈∈ ピル、銃、水道……マリア・レポウスキー
∈∈ 教育の普及……ロバート・R・プロバイン
∈∈ 三三年周期暦……ダンカン・スティール
∈∈ 馬のあぶみと首当て……ピーター・タラック
∈∈ 発明を可能にした社会構造……ジョン・C・バエズ
∈∈ デジタル・ビット……テレンス・J・セジノウスキー
∈∈ 読書用眼鏡……ニコラス・ハンフリー
∈∈ 製紙技術 ……クリフォード・ピックオーバー
∈∈ 乾草……フリーマン・ダイソン
∈∈ 電池……ダニエル・C・デネット
∈∈ プログラム可能なコンピュータ……ロレンス・M・クラウス
∈∈ レンズ……ジーノ・セグレ
∈∈ 万能チューリング機械……ジョージ・ダイソン
∈∈ 椅子と階段……カール・サバーク
∈∈ 複式簿記法……ゴードン・グールド
∈∈ ガトリング砲……ボブ・ラフェルソン
∈∈ 馬の家畜化……スティーブン・ブディアンスキー
∈∈ コンピュータ……デービッド・ヘイグ
∈∈ コンピュータ……ウィリアム・H・カルビン
∈∈ インド−アラビア計数法……V・S・ラマチャンドラン
∈∈ 真空管……ピーター・コクラン
∈∈ 印刷術……ヘンドリック・ハーツバーグ
∈∈ 公開鍵暗号システム……チャールズ・サイモニー
∈∈ ボルタ電池……ジョン・レニー
∈∈ 麻酔……スチュアート・R・ハメロフ
∈∈ 二十世紀後半の医療……ジェームズ・J・オドネル
∈∈ 都市……スティーブン・ジョンソン
∈∈ 籠……ジェレミ・チャーファス
∈∈ インド−アラビア記数法……キース・デブリン
∈∈ 言及に値するものなし……エバハート・ツァンガー
∈∈ なし……ヘンリー・ワーウィック
∈ 第二部 発明が思考を変えた
∈∈ 超自然現象を信じないこと……マレイ・ゲルマン
∈∈ 民主主義と社会正義……スティーブン・ローズ
∈∈ 平等の理念など……ジョーゼフ・レドゥー
∈∈ 特別でないと自覚したこと……ドン・ゴールドスミス
∈∈ アルファベットとレンズ……スティーブン・ピンカー
∈∈ 淘汰による進化の考え……ポール・W・エバルト
∈∈ 望遠鏡……ブライアン・グリーン
∈∈ 科学的方法……ジョーゼフ・トラウブ
∈∈ 教育という概念……スタニラス・デハーネ
∈∈ コンピュータ・ネット……ジョン・C・ドゥボラック
∈∈ マーケティング……ジェフリー・ミラー
∈∈ 哲学的懐疑主義……ルーエン・チォウ
∈∈ 自律性をもって動く道具……ピート・ハット
∈∈ 幾何学……トマス・デ・ゼンゴティタ
∈∈ 原爆……マーニー・モリス
∈∈ 科学的方法……デービッド・E・ショウ
∈∈ 商品としての情報……デービッド・ベルビー
∈∈ 進歩しつづけるという認識……ジョン・マッカーシー
∈∈ 対照群……デービッド・G・マイヤーズ
∈∈ 非宗教主義……ジェイ・オーグルビー
∈∈ 科学……ミルフォード・H・ウルポフ
∈∈ 疑問文と宇宙旅行……ルーベン・ヘルシュ
∈∈ 確率論……クリストファー・ウェストベリー
∈∈ 時計……W・ダニエル・ヒリス
∈∈ エコノミック・マン……メアリー・キャサリン・ベイトソン
∈∈ 鐘と交響楽団……ジュリアン・B・バーバー
∈∈ においの化学的認識……マービン・ミンスキー
∈∈ 望遠鏡と自然淘汰説……クリストファー・G・ラングトン
∈∈ ゲーデルの不完全性定理……クレイ・シャーキー
∈∈ 避妊用ピル……コリン・ブレイクモア
∈∈ 遺伝子工学……オリバー・モートン
∈∈ 盤上ゲーム……ジョン・ヘンリー・ホランド
∈∈ 自我……ジャロン・ラニアー
∈∈ 自治……エスター・ダイソン
∈∈ 微分積分法……ジョン・マドックス
∈∈ 微分積分法……バート・コスコ
∈∈ 無限算法……ベリーナ・ヒューバー=ダイソン
∈∈ 自由意志……ジョン・ホーガン
∈∈ 鏡……トー・ネレットランダース
∈∈ 無意識の概念……シェリー・タークル
∈∈ 分光器……リチャード・ドーキンス
∈∈ 量子論……フィリップ・アンダーソン
∈∈ コペルニクスの地動説……マイケル・ネスミス
∈∈ 印刷機……フィリップ・キャンベル
∈∈ キリスト教とイスラム教……スチュアート・ブランド
∈∈ 旗など……ミハイ・チクセントミハイ
∈∈ 数学における表現の概念……リー・スモリン
∈∈ ある考えについての考え……ジョージ・レイコフ
∈∈ デジタル生態系……アンディ・クラーク
∈∈ 数字をつかった予測能力……ジョージ・ジャクソン
∈∈ 見えない技術体系……ハワード・ラインゴールド
∈∈∈ あとがき……ジャレド・ダイアモンド
∈∈∈ 訳者あとがき
∈∈∈ 執筆者名索引

⊗ 編者略歴 ⊗

ジョン・ブロックマン
ソフトウェア・エージェント、リテラリー・エージェントであるBrockman,Inc.の創設者。
『<意識>の進化論』(青土社、長尾力他訳)をはじめとする19冊の著者・編者でもある。
また、本書の元となったウェブサイト「エッジ」を主宰、編集している。ニューヨーク在住。