理科の教室
前口上
人間の前にドーブツいた。その前に植物が繁った。
植物の前にコーブツがいて、地球が酸素でかこまれた。
そういうところに花と虫が一緒にあらわれた。
ぼくはささやかな理科少年だった。
デボン紀、石炭紀、ジュラ紀、白亜紀にどきどきし、
タングステンおじさんやシダの密生に憧れた。
(前口上・松岡正剛)
千夜千冊は中谷宇吉郎『雪』を第一夜としてスタートし、理科少年だった松岡のセンス・オブ・ワンダーを明かす本をたくさんとりあげきた。ときに憧れの科学者たちの黒板授業を再現するように、ときに鉱物や植物の構造に分け入るように、またペンギンやネコやクラゲといった生きものたちの生態を愛おしむように。愛すべきリケオ松岡の「理科する」気分と手際が詰められた、珠玉の一冊。
第1章 科学のおじさん
『ロウソクの科学』のマイケル・ファラデーからオリヴァー・サックスの『タングステンおじさん』まで。寺田寅彦も中谷宇吉郎も湯川秀樹も朝永振一郎も。リケオ松岡を育んだピカピカの科学者と、どこか懐かしい理科センセーと、少年少女を不思議世界に誘う「ヘンなおじさん」が勢ぞろい。
第2章 鉱物から植物へ
寡黙な鉱物や化石、樹木やシダやコケが隠し持つ、全生命地球の雄弁な記録をいかに読み解くか。いまも「理科年表」を愛読し、シュールミネラリストを自称する松岡が、鉱物・植物の見方、聴き方、触れ方、感じ方を、学術泰斗のセンセーと独創独学のセンセーとともに、自在に案内。
第3章 虫の惑星・ゾウの耳
サンゴとナマコ、三葉虫・クラゲ・貝のミラクル、メダカに虫に蝶々に、ペンギン・フクロウ・カラスに、愛すべきはネコかサルかイヌなのか。人と生きものたちは、どんな共生経済圏を育み、編集的相互作用をもたらしあってきたのか。千夜千冊ズーラシアがにぎやかに開演。
第4章 背に腹はかえられるか
人間は幼稚なサルだが、胎児は1億年の生命史を再現してみせる。背中と腹の違いは融通無碍だが、電機システムとしての人体は精妙である。「ヒトの惑星」には内なるカイチュウも外なる感染症も生きている。レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』が訴える「かけがえのない地球」と人間の問題を考える。
『理科の教室』
第1章 科学のおじさん
- 859夜 マイケル・ファラデー 『ロウソクの科学』
- 1683夜 ウィルヘルム・オストワルド 『化学の学校(上・中・下)』
- 18夜 アンリ・ポアンカレ 『科学と方法』
- 660夜 寺田寅彦 『俳句と地球物理』
- 1夜 中谷宇吉郎 『雪』
- 348夜 野尻抱影 『日本の星』
- 828夜 湯川秀樹 『創造的人間』
- 67夜 朝永振一郎 『物理学とは何だろうか』
- 768夜 ジョージ・ガモフ 『不思議の国のトムキンス』
- 1238夜 オリヴァー・サックス 『タングステンおじさん』
第2章 鉱物から植物へ
第3章 虫の惑星・ゾウの耳
- 1487夜 本川達雄 『生物学的文明論』
- 780夜 リチャード・フォーティ 『三葉虫の謎』
- 744夜 奥谷喬司編 『貝のミラクル』
- 124夜 坂田明 『クラゲの正体』
- 195夜 トニー・ウィリアムズほか 『ペンギン大百科』
- 1307夜 岩松鷹司 『メダカと日本人』
- 277夜 ハワード・エヴァンズ 『虫の惑星』
- 1145夜 日浦勇 『海をわたる蝶』
- 616夜 ジェームズ・パウエル 『白亜紀に夜がくる』
- 533夜 クリス・ミード 『フクロウの不思議な生活』
- 640夜 佐々木洋 『カラスは偉い』
- 802夜 クリス・レイヴァーズ 『ゾウの耳はなぜ大きい?』
- 484夜 日高敏隆 『ネコはどうしてわがままか』
- 94夜 子母沢寛 『愛猿記』
- 214夜 江藤淳 『犬と私』