デザイン知
前口上
「デザインする」の前に「喜怒哀楽する」や「知覚する」があった。
「知覚する」の前に「生活する」や「自然する」があった。
それらには、相互につながりあう「しるし」と「かたち」が萌芽した。
デザインはそれらを摑み取りつつ砕いて新たな「しくみ」を生じさせていく。
そんなデザイナーたちの際立つ思想を凝視してみたい。
(前口上・松岡正剛)
「デザインとは“脱しるし”だ」というキーコンセプトが本書に通底している。ユクスキュルの「環世界」や佐々木正人の「アフォーダンス」といった知覚パターンの秘密をさぐるサイエンスの見方を入れつつ、杉浦康平、石岡瑛子、ブルーノ・ムナーリ、川崎和男といった松岡が憧れ、影響を受けてきた多彩なクリエイターたちの表象と意匠を紹介する。
第1章 「かたち」が「いのち」
前半に"かたち"に関する千夜を並べ、デザインがマザータイプである自然をどのように”脱しるし化”していったのか、そもそも「かたち」が自然の中でどのように発生し、決定されたかを明らかにする。またウィトカウアーのアレゴリー論とパノフスキーのイコノロジー研究を通して、イメージが編集されるプロセスにも着目。
第2章 知覚とデザイン
ユクスキュルの環世界を冒頭に、知覚をあつかった千夜が並べられた章。「分節」こそが造形に最も重要なものだと説いたパウル・クレー。“かたち”を見出そうとするゲシュタルト知覚と対象物が知覚に与える影響に着目したアフォーダンス、認知工学の知見を駆使して、デザインとは何かを問うドナルド・ノーマン。
第3章 技能から表象へ
日本人の造形感覚を代表する「てりむくり」、伊東忠太のアニマ感覚をとりあげて、明治から昭和にいたる近代日本デザインの夜明けをながめる。静かに語る大工道具と平田棟梁のいぶし銀の生き様が深い。松岡の視覚的発想に影響を与えたモホリ=ナギの「ニューヴィジョン」を最後にとりあげる。
第4章 デザイナーの意表
これまで数多くのデザイナーと交流してきた松岡が、濃密でかっこいい「デザインの夢」に挑んだクリエイターたちの本を並べた。ブルーノ・ムナーリ、ソットサス、杉浦康平、堀内誠一、石岡瑛子、内田繁、川崎和男、山中俊治、鈴木一誌が揃い踏み。意表は意図から派生する。異能のデザイナーはその秘密を握る。
『デザイン知』
第1章 「かたち」が「いのち」
- 1520夜 ヴィレム・フルッサー 『デザインの小さな哲学』
- 308夜 ランスロット・ロウ・ホワイト 『形の冒険』
- 1311夜 ジョージ・ドーチ 『デザインの自然学』
- 140夜 ルネ・ユイグ 『かたちと力』
- 401夜 吉田光邦 『文様の博物誌』
- 685夜 ルドルフ・ウィトカウアー 『アレゴリーとシンボル』
- 928夜 エルヴィン・パノフスキー 『イコノロジー研究』