宇宙と素粒子
前口上
宇宙はまわっている。地球も月も太陽も銀河も銀河団も、
電子も原子も花粉も木の根っこもウイルスも、みんな絡んでいる。
ビッグバンが素粒子をつくり、素粒子が物質をつくってきた。
でも、時間をめぐる「三つの矢」の区別も、
「四つの力」の重力量子化も、ゲージ理論の効用も、
結着がつかないままにある。万事、香ばしくも悩ましい。
(前口上・松岡正剛)
松岡が50年以上にわたって親しんできた科学書のなかから、極大の宇宙と極小の素粒子をめぐる代表的な本を揃え、俯瞰しやすいように編集した。ガリレオやケプラーの古典的宇宙論から、熱力学とエントロピー、137億年の宇宙史、相対性理論、インフレーション理論仮説、ダークマター仮説まで、「サイエンスの見方」を説きつつ「見方のサイエンス」の可能性までを示唆する。
第1章 天体のめざめ
ガリレオの『異界の報告』、ケプラーの『宇宙の神秘』、ハッブルの『銀河の世界』を入り口に、黎明期の天体科学がもちえたアナロジカルな方法ロマンを案内。『新しい太陽系』『月はすごい』で太陽系の星々の実学に触れ、締めは松岡が何度か科学談義をしてきた佐治晴夫センセーの香しい宇宙観想術へと誘う。
第2章 時間・エントロピー・ゆらぎ
熱力学第二法則というもっとも手ごわい物質原理を軸に置きながら、エントロピーと時間と情報の関係や、秩序と無秩序の「あいだ」に分け入る。さらに「ゆらぎ」と「対称性の破れ」からはじまる散逸構造や自己組織化などの物質モデル、物質と宇宙の法則と理論を統一する「万物理論」の行方も絶妙に解説。
第3章 宇宙を物理する
池内了と佐藤勝彦という、松岡が信頼する二人のサイエンティストの宇宙物理入門の手際を紹介したうえで、いよいよマッハ、アインシュタイン、ホーキングの三人の天才たちによる相対性理論と量子重力論を簡潔に案内。仕上げは宇宙構造の謎を握るダークマターと、情報が鍵を握る並行宇宙論。
第4章 千一夜目の宇宙論
Web連載の千夜千冊が千冊を達成した直後から、「千夜一尾」として全五夜にわたって連続案内したブライアン・グリーン『エレガントな宇宙』だけで構成。スーパーストリング理論や十一次元宇宙といった最新理論を丹念に解説している。途中で胃癌を宣告され入院手術をすることになった報告も合わせて収録。
第5章 素粒子と量子
マクロな物質宇宙の法則や概念では取り扱いができないミクロな量子の世界の謎を、ヤン・チェンニン、ハイゼンベルク、ドゥ・ブロイ、デヴィッド・ボーム、佐藤文隆らの気鋭の物理学者たちの方法科学とともに案内する。Web千夜公開当時、物理学者たちが松岡の解説力を絶賛した『ヒッグス粒子の謎』にも注目。
『宇宙と素粒子』
第1章 天体のめざめ
- 1734夜 ガリレオ・ガリレイ 『星界の報告』
- 377夜 ヨハネス・ケプラー 『宇宙の神秘』
- 167夜 エドウィン・ハッブル 『銀河の世界』
- 1231夜 渡部潤一 『新しい太陽系』
- 1732夜 佐伯和人 『月はすごい』
- 1226夜 佐治晴夫 『宇宙の不思議』
第2章 時間・エントロピー・ゆらぎ
- 1061夜 リチャード・モリス 『時間の矢』
- 368夜 ピーター・W・アトキンス 『エントロピーと秩序』
- 909夜 イリヤ・プリゴジン 『確実性の終焉』
- 1731夜 エリッヒ・ヤンツ 『自己組織化する宇宙』
- 670夜 ヘルマン・ワイル 『数学と自然科学の哲学』
- 1180夜 ジョン・バロー 『万物理論』