戒・浄土・禅
前口上
日本仏教はとても魅力に富んでいるのに、うまく語れてこなかった。
インドは「幻」、中国が「文」、日本は「絞」とは言うけれど、
もっと風変わりな本覚観や念仏観だって動いてきたはずだ。
神仏は習合しやすく、王仏は近づきやすく、
戒律も浄土も、法華も禅も、すこぶる日本的なのだ。
仏性、いまだ爛れること蓬髪の如し。円教、束ねてなお錫杖の如し。
名うてのお題をずらり俎上においてみた。
『仏教の源流』に次ぐ仏教シリーズ第二弾。日本仏教に関連する千夜千冊ばかりを集めて編集した「ぼくの編集思想にとって最も挑戦しがいのある課題に充ちた」一冊である。日本仏教の潮流を俯瞰的に案内する第一章から、今日につながる日本仏教の位置づけや可能性を示唆する最終章へ、コンパクトな文庫本ながら日本仏教の巨きな見取り図を提示している。