神と理性西の世界観Ⅰ
前口上
二〇〇〇年に及ぶヨーロッパの全思想史は、
プラトンとオリゲネスに付いた脚注だった。
そこから「神」と「理性」と「普遍」と「合理」がリクツになって、
世界劇場と経験論と論理式がせっせと組み立てられて、
「自己」と「啓蒙」が自信過剰に拡がった。
そんな十八世紀までの「西の世界観」を一望する。
(前口上・松岡正剛)
ヨーロッパが神と理性によって世界を解釈した理由を追って、プラトンとアリストテレスの構想が、キリスト教によるシナリオが、中世の伝承力と排除力の意味が、ホッブズらの国家理性が、案内される。一方、スピノザやライプニッツやヴィーコの知的取り組みの深みと意義、ルソーらの啓蒙思想家たちの奔放な発想が、それぞれ追跡される。
第1章 神と王の国
西洋の理性中心思想のルーツであるプラトンとオリゲネスを軸にした章立て。ギリシア哲学が編み出したロゴスと、キリスト教の理知がどのようにむすびつき世界を記述していったのか。カエサルの帝国支配戦略や、中世のゴシックブーム、マキアヴェリの君主論にも触れ、ヨーロッパの起源を掘りおこす。
第2章 理性による世界作成
ヨーロッパの理性は「合理」を確立し、「世界」の作成原理を説明しはじめた。イエズス会は理性世界拡張に向かい、ピューリタニズムは人間を近代人にしていく。ホッブズは幻獣じみた近代国家原理を発見し、スピノザは神を幾何学的に論証しようとする。ライプニッツとヴィーコが、「知」と「学」による世界記述を試みた。
第3章 西洋哲学史略義
西洋の理性による哲学がどんな世界記述をしてきたかを俯瞰する章。松岡が長らくアンチョコにしていたというヘーアの千夜で、2000年におよぶ「西の理性」の特色と変遷をかいつまむ。マイネッケの千夜では、「国家理性」の胚胎と拡張の歴史をとりあげ、「啓蒙主義」へと繋がっていくいきさつをたどる。
第4章 啓蒙と変革の庭
知の変容を進めた啓蒙家たちの編集力を発見する章。モンテーニュの「懐疑」はエセーという方法を編み出し、新たな哲学の芽生えを促した。ヨーロッパのサロンが世界観の苗代となり、ヴォルテールやルソーの啓蒙主義が醸成された。ディドロとダランベールのモーラ的百科全書思想、バークの崇高の美学の眼目も案内。