観念と革命西の世界観Ⅱ
前口上
なぜ西の現代史はドイツの二度の敗戦と逆上に向かったのだろうか。
カント、フィヒテ、ヘーゲルの観念哲学は昆虫の巣にすぎなかったのか。
ショーペンハウアーとニーチェのシナリオは非‐共同体の幻想だったのか。
本書は、その後のマルクスとハイネ、レーニンとトロツキー、
フッサールとハイデガー、サルトルとカミュを対比しつつ、
二十世紀前半の西の「喘ぎ」と「変奏」と「唐突」を綾模様にしてみた。
(前口上・松岡正剛)

世界のおおもとを追憶するか、それとも変革に導くか。フィヒテ、ヘーゲル、ショーペンハウアー、ニーチェ、フッサール、ハイデガーなどのドイツ哲学を中心に、マルクス、レーニン、トロツキーらの革命論、ベルクソン、サルトル、カミュ、レヴィ=ストロースのフランス思想を織り成した。
第1章 ドイツという観念
「ドイツに潜む普遍性」を模索したゲーテを先頭に、ドイツの魂の高揚を国民に訴えたフィヒテ、弁証法をもちいて観念論を絶頂にむかわせたヘーゲルが並ぶ。そこにクラウゼヴィッツの軍事戦略論の骨格、革命実践のマルクスと革命詩人のハイネのあいだの奇妙な関係が織り込まれた。

第2章 神は死んだのか
本章ではショーペンハウアーが共苦に意志を見た「ミットライト・ペシミズム」と、ニーチェが超人の目による「ニヒリズム」を解くにいたった哲学に浸り、2人の大胆極まりない思索の跡をたどる。近代ドイツの狭間でおきた享楽的なビーダーマイヤー時代が鍵を握る。古代から近代にいたるドイツの歴史も冒頭で案内。

第3章 青年・戦火・革命
世界大戦で厄災を被ったヨーロッパを舞台に、観念的暴走に走るドイツとロシアの背景を追う。ドイツ青年運動がナショナリズムの温床となり、トーマス・マンはドイツ人たるパトスを戦火と病に立ち向かわせる。ロシアの革命思想は真紅にそまり、レーニン、ロープシン、トロツキーのアナキズムが、テロと結びついていく。

第4章 危機の20世紀哲学へ
大戦後の世界像を求めて、フッサールの現象学、ベルクソンの創造的進化論、ハイデガーの存在学、サルトルの実存主義が相次いで、それぞれどんな仕組み立てを模索したのか、その悩ましい工夫について案内する。カミュやレヴィ=ストロースの2人が提示したのは、「不条理」と「非西洋」というものだった。

『観念と革命』
第1章 ドイツという観念
- 970夜 ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ 『ヴィルヘルム・マイスター』
- 390夜 ヨハン・ゴットフリート・フィヒテ 『ドイツ国民に告ぐ』
- 1708夜 G・W・F・ヘーゲル 『精神現象学』
- 1200夜 フリードリッヒ・ヘルダーリン 『ヘルダーリン全集』
- 273夜 カール・フォン・クラウゼヴィッツ 『戦争論』
- 789夜 カール・マルクス 『経済学・哲学草稿』
- 268夜 ハインリッヒ・ハイネ 『歌の本』