仏教の源流
前口上
仏教を抹香くさいものにしたままでは、いけない。
ブッダ本人はラディカルで、アナーキーだった。
ナーガールジュナは西洋知が届かない考え方を画期的にもたらした。
いったい、インド哲学や仏教とは何だったのか。
サーンキヤ学派から華厳思想をへて弥勒下生の構想へ。
途中に維摩居士という、とんでもないおっさんが坐っています。
(前口上・松岡正剛)
二十代より古代インド哲学や仏教経典や禅に親しんで、『空海の夢』『法然の編集力』などの著書もある松岡は、「千夜千冊」においても多くの仏教関連書を取り上げてきた。本書は、そのなかからインドの原始仏教から中国の漢訳仏教までを、エディション仏教篇第一弾として収めたもの。一人のブッダの教えから無数のブッダを生み出した東洋知の融通無碍を存分に味わえる一冊となった。
第1章 古代インドの哲学
中村元と木村泰賢というインド哲学・仏教学の二人の泰斗を劈頭に置き、ブッダの教えにつながる古代インド哲学を解説。さらにヒンドゥイズムの聖典『バガヴァッド・ギーター』の波瀾万丈の物語を通して古代インド哲学のラディカリズムを浮上させ、宮元啓一が提示した「七つの難問」によって読み解き方を披露。
第2章 ブッダの目覚め
仏教を理解するためには、王子シッダールタがどのようにしてブッダになったのか、なぜブッダは苦行を捨てて覚醒に向かったのかを知る必要がある。東西の仏教研究者の本を重ねながら、ブッダの生涯と思想を詳述したうえで、「ブッダによる教え」から「ブッダになる教え」を導きだした「ブッダたちの仏教」を繙く。
第3章 仏典の編集的世界像
大乗仏教はどのように興り、発展していったのか。「大乗仏教は菩薩の仏教である」という見方に沿って、そのダイナミックな潮流を俯瞰する。また大乗ムーブメントのなかで次々と起こった仏典結集の成果のなかからとくに『法華経』『華厳経』『維摩経』に注目し、それぞれの成り立ちと驚くべき編集的世界像を案内する。
第4章 中国仏教の冒険
道安は教相判釈と五時八教によって、鳩摩羅什は天才的な言語編集によって仏教を中国化した。インド仏教が衰退していく一方、漢訳仏教は拡張を続け、歴代王朝において儒教・道教との先陣争いを繰り広げた。東西文化が行き交ったシルクロードの宗教と、古代朝鮮に開花した独自の弥勒信仰も合わせて紹介する。