才事記

すでに御存知の諸君が多いようだが、さる5月25日、「松岡正剛・千夜千冊エディション」シリーズの最初の2冊が角川ソフィア文庫にお目見えした。『本から本へ』と『デザイン知』だ。8月からは毎月1冊ずつ配本されていく。
これまでの千夜千冊をかなり大胆に20~30冊ずつ再構成して、新たな編成組曲に仕立てたもので、かなり品揃えに凝った。そのための加筆推敲もかなり加えてあるので、自分で言うのもなんだけれど、けっこうおもしろいものになっていると思う。すでに2冊とも重版された。
『本から本へ』は1「世界読書の快楽」で、ぼくがどのように本を読み書きしているのかということを、道元・パスカル・馬琴・バルザック・ポーをもってリプレゼンテーションした。2「書架の森」と3「読みかた指南」では、そもそも歴史的に読書はどんなメソッドで確立してきたのか、そのための図書館や読書会はどのように組み立てられてきたのか、いったい「本読み」とはどういう作業のことなのか、そのあたりを逍遥した。カラザースの『記憶術と書物』、ロストの『司書』が圧巻だ。4「ビブリオ・ゲーム」は一転して電子書籍時代の「読書」の意義や意味を追った。デジタル派のユーリンとマーコフスキーがリアル本にこだわる理由が必見だろう。
『デザイン知』はどうしてもまとめておきたいイメージング・インテリジェントのための第1弾で、ユクスキュル、メルロ=ポンティ、ゲシュタルト心理学、ウィトカウアーのアレゴリー論、ホワイトの形態学、パノフスキーのイコノロジーなどをふんだんに配した。そこにパウル・クレーの『造形思考』を筆頭に、モホリ・ナギ、エットーレ・ソットサス、ブルーノ・ムナーリ、原弘、杉浦康平、石岡瑛子、山中俊治・川崎和男・深澤直人らの実作者のデザイン知を注ぎこんでみた。先だってギョーカイ人から「爆発的に読まれてますよ」と聞かされた。
8月の3冊目は『文明の奥と底』を予定している。すでにゲラ校正したが、これは厚みも深みも「ハンパじゃない」、かなりの重戦車だ。期待していただきたい。