父の先見
◆新潮クレスト・ブックスという海外現代文学シリーズがある。ノンフィクションを含めて斬新なラインが読める。アリス・マンローの『ディア・ライフ』は透明な文体の達人技が堪能できた。◆ブライアン・エヴンソンの『遁走状態』は眩しい悪夢が連打される瞠目の短篇集だった。インドとアメリカを舞台にしたジュンパ・ラリヒの長篇『低地』、女スパイと作家が恋に落ちるイアン・マキューアンの『甘美なる作戦』、憂鬱症のペンギンを伴侶とする男に迫る見えない恐怖を描いたアンドレイ・クルコフの『ペンギンの憂鬱』、いずれも遊べた。◆なかでもジュノ・ディアスのマジック・リアリズムが捌いた『オスカー・ワオの凄まじい人生』に出会えたのは、かけがえがない逢着だった。そして斬新きわまりない映画監督ミランダ・ジュライの『いちばんここに似合う人』と写真入りノンフィクションの『あなたを選んでくれるもの』だ。空気を切りまくっている。